親が認知症かもしれない、あるいは認知症と診断された。
そのとき家族は、驚きや不安、戸惑いで頭がいっぱいになることがあります。
「これからどうなるのだろう」
「私がしっかりしないといけないのかな」
「どう接したら本人を傷つけずにすむのだろう」
そんなふうに悩むのは、決して特別なことではありません。
認知症になると、物忘れだけでなく、段取りが難しくなる、同じ話を繰り返す、外出先で迷うなど、日常の中で少しずつ変化が出てきます。家族が支えようとしても、思うように伝わらず、親子関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
ですが、早い段階で相談先を確保し、生活の変化を記録し、安全面の備えを進めていくことで、家族の負担を減らしながら暮らしを整えやすくなります。
この記事では、親が認知症になったときに家族がやるべきことや、無理をしすぎない関わり方について、わかりやすく解説します。
親が認知症になると日常生活にどんな変化が出る?
親が認知症になると、最初は小さな物忘れのように見えても、少しずつ生活のさまざまな場面に影響が出てきます。
たとえば、同じ質問を何度も繰り返す、約束や予定を忘れるといった変化がみられます。さらに、料理や買い物の手順が混ざる、会計のやり方に迷う、薬の飲み忘れが増える、支払いが遅れるなど、段取りよく進めることが難しくなることもあります。
ほかにも、次のような変化が起こりやすいです。
・身だしなみが整いにくくなる
・季節に合わない服装を選ぶ
・ゴミ出しや片づけが進まない
・冷蔵庫に同じ食材が増える
・家の中で物を探す時間が長くなる
・外出時に道に迷いやすくなる
このような変化は、本人の努力不足ではありません。認知症によって、記憶だけでなく、判断や段取りの力にも影響が出るためです。
親が認知症になったとき家族関係に起こりやすい変化
認知症が進むと、親子や家族の関係にも変化が出やすくなります。
物忘れを指摘されると、本人は恥ずかしさや不安から怒ったり、話をそらしたり、認めたがらなかったりすることがあります。家族は心配して声をかけているつもりでも、本人からすると「責められた」「否定された」と感じることがあるのです。
その結果、
・会話がかみ合いにくくなる
・口数が減る
・外出を避けるようになる
・家族との距離を置こうとする
といった変化につながることもあります。
また、家族側も「どうして伝わらないのだろう」「何度言っても同じだ」と疲れがたまりやすくなります。言葉が強くなってしまい、あとで自己嫌悪になる方も少なくありません。認知症の介護では、本人だけでなく家族の心の負担にも目を向けることが大切です。
親が認知症になったらまずやるべきこと
親が認知症といわれた直後は、何から手をつければよいのか迷いやすいものです。ここでは、家族が最初に取り組みやすい流れを紹介します。
まずは病院や地域包括支援センターに相談する
最初に大切なのは、相談先を確保することです。
受診先では、診断や治療だけでなく、生活の困りごとも一緒に伝えましょう。
相談先としては、次のようなところがあります。
・かかりつけ医
・認知症疾患医療センター
・認知症を専門とする医師
・地域包括支援センター
・市区町村の高齢福祉担当窓口
地域包括支援センターでは、介護保険の申請方法や、使えるサービスについて相談できます。家族だけで抱え込まず、早めに外部とつながることが大切です。
生活の変化を記録する
次に、親に起きている変化を記録しましょう。
記録するときは、単なる「物忘れ」ではなく、生活にどんな困りごとが出ているかを具体的に書くのがポイントです。
たとえば、
・同じ買い物を何度もしている
・支払いを忘れている
・薬が余っている
・火を消し忘れた
・約束の場所に行けなかった
などです。
日時、状況、家族の対応、本人の反応を簡単にメモしておくと、受診時や要介護認定の相談でも役立ちます。完璧に書こうとしなくて大丈夫です。続けることが大切です。
安全面の確認をする
認知症では、日常生活の中で安全面の心配も増えてきます。特に確認しておきたいのは次の4つです。
1. 外出時の迷子対策
連絡先を書いたカードを持ってもらう、靴や上着に名前や連絡先を付ける、散歩コースを家族で共有するなどの備えが役立ちます。
2. 火の元の確認
調理中の見守り、使いやすい調理器具への変更、火を使う場面の見直しなどを行います。
3. 服薬管理
お薬カレンダーの活用、一包化、家族の声かけの時間を決めるなどで飲み忘れや重複を防ぎます。
4. 金銭トラブルの予防
支払い方法をできるだけ簡単にし、電話勧誘や詐欺対策として電話設定を見直すことも大切です。
認知症の親に対する家族の関わり方
認知症の親に接するときは、正しさを伝えることよりも、安心して過ごせることを優先した関わり方が大切です。
短くわかりやすく伝える
一度にたくさん伝えると混乱しやすいため、一文を短く、一度に一つだけ伝えるようにしましょう。
たとえば、
「早く準備して病院に行って、そのあと買い物もしよう」
ではなく、
「今から病院に行きます」
と一つずつ伝える方がわかりやすくなります。
間違いを責めない
認知症では、本人に悪気がなくても失敗や勘違いが起きます。そのたびに責めたり、正そうとしたりすると、不安や怒りが強くなりやすいです。
間違いを指摘したくなったときは、事実を争うよりも、気持ちに寄り添いながら次の行動へつなげましょう。
できたことを認める
できないことばかりに目が向くと、本人の自信は失われやすくなります。
洗濯物をたたむ、食器を拭く、散歩をするなど、できることを小さく続けてもらうと、役割や自尊心を保ちやすくなります。
家族が無理をしすぎないために大切なこと
認知症の介護は、家族の頑張りだけで続けるものではありません。
無理を重ねると、家族の心身が先に疲れ切ってしまいます。
以前と同じ関係を求めすぎない
認知症になると、昨日できていたことが今日は難しいという波が出ることがあります。以前と同じように会話し、判断し、段取りできることを期待しすぎると、どうしても衝突が増えやすくなります。
大切なのは、本人を変えようとするよりも、環境や伝え方を変えることです。
家族内で役割分担をする
一人がすべて抱え込むと、疲れや不満がたまりやすくなります。
通院の付き添い、連絡窓口、買い物、金銭管理など、できる範囲で役割分担を考えましょう。
休む時間を意識して確保する
介護する人自身の睡眠、食事、通院、気分転換もとても大切です。
週に一度でも一人になれる時間を持つ、しんどい日は少し距離を置くなど、介護者が疲れすぎない仕組みづくりが必要です。
認知症で利用できる支援や介護サービス
認知症の介護は、家族だけで抱え込まず、制度や地域の支援を活用することが大切です。
まず相談先として頼れるのが地域包括支援センターです。ここでは、介護保険の申請やサービス選びについて相談できます。
介護保険を申請すると、状況に応じて次のようなサービスが利用できます。
・訪問介護
・訪問看護
・デイサービス
・ショートステイ
・福祉用具の貸与
・見守り支援
・家事支援
・入浴支援
軽い支援で足りる段階から外部サービスにつながっておくと、状態が変化したときにも相談しやすくなります。
介護保険サービスの手続きと費用の目安
介護保険サービスの利用手順
介護保険を使うには、まず市区町村へ要介護認定の申請をします。
申請後は、認定調査員が生活状況を確認し、あわせて主治医意見書が作成されます。その結果をもとに、要支援・要介護の区分が決まります。
認定後は、ケアプランを作成して、サービス事業所と契約し、利用開始となります。
介護保険サービスを利用する際の費用負担の目安
介護保険サービスには自己負担があります。自己負担割合は、所得に応じて1割、2割、3割のいずれかです。
自己負担1割の場合の、月あたりの目安は次のとおりです。
・要支援1:5,032円
・要支援2:10,531円
・要介護1:16,765円
・要介護2:19,705円
・要介護3:27,048円
・要介護4:30,938円
・要介護5:36,217円
これは支給限度額まで利用した場合の目安です。
食費や居住費など、別にかかる費用もあるため、利用前にケアマネジャーや窓口で確認しておくと安心です。
まとめ
親が認知症になったときは、家族だけで抱え込まず、早めに相談先を確保して、生活の変化を整理し、安全面の備えを進めることが大切です。
関わり方では、正しさを押し通すより、短くわかりやすく伝え、責めないことを意識すると、本人も家族も落ち着いて過ごしやすくなります。
また、認知症の介護は長く続くこともあるため、家族が頑張りすぎないことも大切です。地域包括支援センターや介護保険サービスを上手に利用しながら、休める時間も確保していきましょう。
できることを一つずつ整えていけば、今の暮らしを少しずつ安心に近づけることができます。まずは、身近な相談先に連絡するところから始めてみてください。
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